NSM WEB MAGAZINE

プロへの第一歩を!

学校・学生紹介

2025.04.28

「音楽を仕事にする」佐藤聖也先生編

「好きな音楽」を仕事に。ミュージシャンとして、音楽クリエイターとして、音響や照明として、マネージャーやライブスタッフとして。音楽業界が多様化する中、音楽に関わる仕事も様々。そうやって音楽と生きていく。好きな事で生きていく。その為の努力や継続や信念を後押ししてくれる専門学校が名古屋にある。名古屋スクールオブミュージック&ダンス専門学校である。(※以下NSM)NSM連載シリーズではどんな先生がどんな思いで生徒と向き合っているかをインタビューでお届けする。第3回目に登場する先生は佐藤聖也先生。専門学校だから学べること、NSMだから学べること。シリーズ第3弾、佐藤聖也先生編をどうぞ。

Interview by 柴山順次
Photo by aoi

2YOU:NSMの講師の皆様にお話を伺っていくインタビュー連載、今回は佐藤先生にお話を伺います。佐藤先生、宜しくお願いします。

佐藤先生:よろしくお願いします。NSM佐藤です。

2YOU:佐藤先生が音楽に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか?

佐藤先生:親がレンタルショップによくCDを借りに行っていたのですが、中学生の頃、付いて行くのが好きで、自分でもCDを買うようになったのが最初ですね。その後、建築系の工業高校に進学したのですが、結構やんちゃな友達が多かったのと、丁度バンドブームだったこともあって、ギターを始める友達が多かったんですよ。それで自分もエレキギターを買ったんですけど「ギターじゃなくてドラムをやってくれ」と言われました(笑)。バンドもやっていたのですが、僕の家が水道会社を営んでいたので、そこと関連付けた仕事も将来的には出来たらいいなと考えるようになって、バンドも建築関係も両方を活かせるのは何か考えて、舞台の業界やライブハウスの経営だったら結びつくんじゃないかと思ったんです。そんな中、工業高校の友達に「そういう専門学校があるから見学してみない?」と誘われて、当時NCAという名前だった今のNSMに進学しました。

2YOU:ちなみに当時はどのような音楽をバンドでやられていたのですか?

佐藤先生:パンク系が流行っていたので、有名なとこで言うとSHAKA LABBITSとか、SHANKやdutboxが出始めた頃にバンドをやり始めました。あとはネオ・ヴィジュアル系と呼ばれていたナイトメア、the GazettE、シドも人気があったので、そういったジャンルをごちゃ混ぜにしてやっていましたね。

2YOU:当時NCAに進学してみて感じたことはありますか?

佐藤先生:自分のやりたいことをやれる学校だなと思いました。勿論色んな基礎を先生に教わるんですけど、その基礎を応用出来ることが大きな成長に繋がるなと。音響の友達や照明の友達ともイベント作りを通して遊んでいたんですど、僕らの言う遊びって自主イベントを作ることだったんですよ。それで周りのコースの先生も「面白いね」って言ってくれて、栄広場で「キックオンフェス」という野外フェスをやったんですよ。電源がないから友達の実家から発電機を持っていったりして(笑)。そうやってみんなで手作りでフェスを作ったりすることが出来る環境があるのもこの学校の面白い部分でしたね。

2YOU:佐藤先生が入学されたのは何コースだったのですか?

佐藤先生:今のNSMの「コンサート企画制作」に該当する当時の「ライブハウススタッフコース」というコースです。当時の担任の先生がライブハウスのブッキングをされていたので、インターンをさせてもらったりもしていました。

2YOU:実際にご自身が講師になろうと思ったのは?

佐藤先生:紆余曲折あるのですが、僕は学校を卒業してからまずはZepp Nagoyaで5年くらい運営アシスタントとして働いていまして、その後縁あって某プロダクションで勤めた後に今度は請負業の株式会社ムーブという会社でイベント事業の請負で建設系の仕事を任せて頂いていました。会館管理、マネジメント、舞台設営、会場設営と、色んな経験を積んだところで、NCA時代の担任に「今度は教える側になってみるのはどうだ?」とお話を頂きまして。自分としても、経験してきたことを後輩に何か繋げられるのではないかと思い、NSMの教員になることにしました。

2YOU:そう思うとご自身がバンドをやられていたことも、ご実家のお仕事も、その後の経験も、全部繋がっていますよね。

佐藤先生:そうですね。それもあって親も凄く応援してくれています。

2YOU:実際に生徒さんにはどのようなことを教えていらっしゃるのですか?

佐藤先生:色んな業界を経験してきた上で大事だと思うマインドの部分であったり、イベント運営の基礎的な舞台用語であったりですかね。その舞台用語が過去の建築用語と結びついていたりするのも面白いんですよ。あとはやっぱり自分がマネジメントを経験していることもあって、ホスピタリティやコミュニケーションの部分も重点的に教えています。色んなことをやってきたからこそ物事を平均で見ることが出来ると思っていまして。昔と違って、時代の変化と共に、転職することでキャリアアップすることもあるじゃないですか。色んな経験で得たスキルを持ってシェアしていくことが大事だなと。

2YOU:昔と違って転職にネガティブなイメージはないかもしれないですね。

佐藤先生:周りも寛大になってきましたからね。だから学生にも夢や目標に対して「一発で目指せ」ではなくて、経験を積んで目指せる業界にはなってきたことを教えています。

2YOU:それこそNSMの卒業生でギターのインストラクターからカメラマンに転職して活躍されている方を僕は知っているので。

佐藤先生:それがまさにキャリアアップですよね。他の卒業生でも、アイドルのマネジメントをやっていたんですけど、会社内の部署異動で東京に行って、そこからキャリアアップで有名なプロダクションに入って成功している子もいて。そういう成功例があることも生徒には話しています。

2YOU:NSMには中高生も見学に来られると思うのですが、この業界に足を踏み込もうとしている若い人へのアドバイスがあれば聞かせて下さい。

佐藤先生:音楽のスキルが必要だとか、楽器が弾けなくちゃいけないとか、そういうことは全くなくて、自分が楽しかったり、誰かが楽しんでくれる為の物作り自体を楽しめるのであれば、前もってのスキルや知識は正直必要ないと思っています。なので、踏み込む一歩としてはやり易い環境だとは思いますね。ただ、知識やスキルはなくても大丈夫なので、色んなことに興味を持ってこの業界に飛び込んで来て欲しいとは思います。直接音楽とは関係なくても音楽に繋がることってありますから。

2YOU:町を歩いて受けたインスピレーションが音楽に繋がることなんて滅茶苦茶ありますからね。

佐藤先生:そうなんです。例えばフライヤーのデザインやイベントの空間を作ることだって立派な音楽の仕事で、そのヒントは普段の学校に通うまでの道のりの中にあったりするんですよ。休みの日にだって閃くことは沢山ありますし。僕は雑貨屋さんに行くのが好きなんですけど、雑貨屋さんにいるだけでグッズのアイデアとか浮かびますし、看板のデザインを見て「こういうものが目につくんだな」と思ったり。そうやって色んなことに目を向けることが大事だってことを伝えたいですね。

2YOU:柔軟な発想が新しい何かを生みますよね。

佐藤先生:この業界って常に動いているというか、変わっていくじゃないですか。だから絶対の回答がないんですよ。例えば「どうやったら動員が伸びるか」という質問に対して、手法は教えられるけれど正解は教えられないんですよ。

2YOU:方程式が存在しない世界というか。

佐藤先生:まさにその通りで、だからこそ、その場に合わせた正解になるべく近付ける手法を考えなきゃいけないのですが、そこに正解はないのですよ。そこで僕が生徒に教えるのが最初に話した「マインド」なんです。僕はブログを書いているのですが、自分の中の発見をブログを通して共有したり、僕が思っていることをマインド的に伝えることで生徒自身が考えてくれたらいいなと思っていて。例えばアニメの話とかも生徒とするのですが、そういう何のとりとめのない話をすることでコミュニケーションが生まれるじゃないですか。そこから何かひとつでも学生から引き出せたらいいなって。

2YOU:音楽に関わらず、どの職種でもコミュニケーションを取ることは大事ですもんね。

佐藤先生:結局相手に伝わらなければ伝わらないんです。何かを発信することで社会が成り立つ訳で、その先に、業界の進化があると思うのです。そういう意味もあって僕は校内でのプレゼンテーションを大事にしています。新入生は入学式でプレゼンテーションを見ることになると思うのですが、そこに驚きを持って欲しいし、興味を持って欲しくて。そういう言葉の手渡しが出来るようになるのもNSMで教えていきたいことなんですよね。

2YOU:CDを作るにしても、イベントを組むにしても、プレゼンテーションは必要ですからね。

佐藤先生:そしてそれは音楽の話だけじゃなくて、何か商品開発をするときにだってプレゼンテーションは必要だし、「ビルを建てましょう」となれば設計図や予算書が必要で、その為のプレゼンテーションが必要じゃないですか。そうやって自分で何かを考え、相手に発信することの大切さを僕は生徒に教えているつもりです。そして生徒から教わることも沢山あります。それがこの仕事をしていて面白い部分ですね。

2YOU:それでは最後に在校生やこれからNSMに進学する生徒さんにメッセージを頂けますでしょうか。

佐藤先生:とにかく色んな経験をして、沢山失敗をして下さい。失敗をするということは何かアクションをしているということなので、行動して、その中で怒られたり教えられたりして、苦労した先に、成功して下さい。その経験があなたを成長させると思います。挫折から成功に自分自身を導いていく。そういった経験を沢山積んで社会に出ていって欲しいですね。社会に出たら失敗のひとつで終わってしまうことがあります。でもその失敗をサポート出来るのが学校だし、我々教員だと僕は思っています。

こちらの記事はアーティストのインタビューに特化したメディア「2YOU」で公開された記事を転載したものです。
https://2youmagazine.com/column/nsm250110/