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We are NSM!アクター卒業演劇公演「あゆみ」観劇レポート

みなさんこんにちは!

入学事務局の服部です。

 

先日から新入生オリエンテーションが始まり、

15日には入学式を控えているNSMは新しい風が吹きそうでなんだかワクワクした雰囲気が

漂っています。

 

そんな中、今回は2月に行われたアクター卒業演劇公演「あゆみ」について、

遅ればせながら書いていきたいと思います。

 

 

コロナ禍で入学してきてくれた2年生の皆さんは、

なかなか公演ができなかったり、マスクをしたままでコミュニケーションがとりづらいこともあったと思います。

そんな中、この卒業公演は初めてマスクを外して上演、

さらにずっと育てて支えて見守ってくれた保護者の方に見ていただくことができました。

 

藤崎先生をはじめ、

この公演に関わったすべての皆様にリスペクトの気持ちです。

 

(ラッキーセブン)

 

ここからはただの演劇好きによる感想レポなので、

ネタバレと自己解釈が大いに含まれた内容になりますので、予めご了承ください!

 

(※追記:感想というかあらすじ紹介みたいになりました。ふがいなし)

 

ではさっそくスタートです!

 

まず、「あゆみ」とはどんな作品なのか。

 

劇作家・演出家の柴幸男氏が手掛ける「全編歩き続ける芝居」

何人もの俳優が、舞台上で俳優たちが縦横無尽に歩き・走り回りながら、一人の女性の人生をつないでつないで演じていく作品です。

舞台もシンプル、俳優たちの衣装も白で統一されていて、

だからこそ俳優一人ひとりの“芝居”がダイレクトに伝わってくる、

まさに2年間の集大成を見せる卒業公演にぴったりな演目だと思います。

 

2018年には、けやき坂46もこの演目に挑戦していましたので、

観劇されている方もいらっしゃるかもしれません。

 

 

さて、では「あゆみ」の物語を振り返っていきたいと思います。

(公演が少し前なので一部記憶が混濁しており、シーンと違う写真を使っていたらごめんなさい)

 

まず主人公の小さな足が「初めの一歩」を踏み出すところから始まります。

幼児は頭の方が重く体幹もないので、危なげな様子。

ふらふらしながら、足もぷるぷるさせながら、母親に向かって一歩を踏み出します。

 

 

演じているのは二十歳の俳優だけれど、

きっと客席の保護者の皆様には、我が子が初めて歩いた時のことが重なって見えたのではないでしょうか。

 

そして、一歩を踏み出した主人公は、

誰にでもある日常を元気いっぱい過ごしていきます。

 

デパートでおもちゃ付きのお菓子をねだったり、

迷子になってお母さんを探して泣いたり。

 

 

通学路でクラスの男の子を喧嘩をしたり、

野良犬を連れて帰ったり。

 

 

クラスであまり話したことの無い女の子と、学校の外で仲良くなったり。

学校でお友達の輪から外れるのが怖くて、

自分の本当の気持ちをしまいこんで“みんな”に合わせたり。

 

そうやって、喜んだり傷ついたりしながら、どんどん成長していきます。

 

子どもの無邪気さやコロコロ変わる表情を、

舞台上を駆け回りながら、幾人もの役者が繋いで演じていきます。

 

この公演は俳優を目指す学生はもちろん、

声優を目指す学生も多数参加しています。

身体を使った表現と声を使った表現を見せてくれていました。

 

高校生になったら、恋だってします。

憧れの先輩と話せたうれしさ、先をいってしまう寂しさ。

 

 

先輩の小さな秘密を共有したり。

 

 

将来のことなんて何にも分からなくて、

きっと少しみんなよりも後回しにしていただろうけれど、

ちゃんと進路を見つけて、親元を離れて暮らしていきます。

 

生まれてからずっと暮らしていた家を出て、

知らない土地で暮らす不安は、

もしかしたら本人より親の方が大きいかもしれませんね。

 

 

娘の暮らすマンションからほど近いところにあるお総菜屋さんの方とおしゃべりする母。

この子に何かあった時、自分では間に合わない時、

助けてくれる誰かを見つけておきたかったのかも。

 

私も大学進学の際に、親元を離れました。

両親は管理人さんや近所の方にご挨拶をしていた、なんだかその記憶が蘇りました。

 

母親が帰ってしまった後、誰もいない部屋に孤独を感じるけれど、

人はすぐ慣れていくものですね。

この辛いことや悲しいことがあった時ではなく、ただただ“寂しい”が表された光と表情。

 

 

すっかり大人になって、社会人に。

この頃には、声やふるまいからあどけなさがなくなって、大人の女性になっています。

 

会社の後輩と、些細なきっかけからほんの少しずつ距離が縮まっていきます。

 

ひどく酔っぱらった主人公を後輩が負ぶって家まで送ってくれるシーンは、

とても印象深いものでした。

 

 

「あってます?」

「あってるあってる」

 

「ここはどっちに行けばいいですか?」

「……まっすぐ」

 

「さっきのところに戻ってきちゃったんですけど。起きて、これ、どっちですか」

「まっすぐ」

 

「いやでも、」

「ずーっとまっすぐ歩けばいいの」

 

 

そして、その後ふたりの距離はどんどん縮まっていき、海へデートへでかけます。

 

そこで、彼が学生時代ミステリーのサークルに入っていたことを聞いてびっくり。

きっとそこで先輩に恋をしていたことを思い出し、

運命めいたものを感じたことでしょう。

 

 

そして、ご両親への挨拶を済ませ、結婚式。

 

娘を嫁に出すことへの寂しさと、

立派に育ったことへの安心や喜び、

それをうまく言葉にできないのが父親ってものですよね。

 

 

娘と腕を組むのにぶっきらぼうで、でも何度も練習したがって。

お父さんが素直じゃないから、お母さんの口数が増える増える。

 

このわちゃわちゃ感、とっても良かったです。

こんな微笑ましい光景がありますか(泣)

 

そうして、二人になった家族は三人へと増えていきます。

 

少しずつお腹が大きくなっていく様子を身体一つで表現していきます。

この動きと声で、身重なからだが見事に表現されています。

 

 

そしてそして、娘の誕生です。

 

愛する我が子が成長していく様子。

私たちはこの光景をつい数十分前に一度見ているのです。

 

 

だからこそ、あの時小さな一歩を踏み出した女の子が、

今や母親になって誰かの人生を育んでいることへの感動がじんわりと胸に広がっていきます。

 

最初は幼児だった主人公にスポットを当てていた観客も、

この時はきっと母親の方に目線が多くいっていたのではないでしょうか。

 

同じ光景でも自然と見るところが変わっていくのがとても面白く感じました。

 

 

自分が大人になって、子どもも生まれて、どんどん育っていって。

居てくれることが当たり前すぎた親が、同じく年を重ねていっているということを、

私たちは忘れがちです。

 

たっぷりの愛情とやさしさで育ててくれた母親を思って、

でも電車の中で何もできない、その孤独感を照明が浮かび上がらせていました。

 

 

自身に襲い掛かる“寂しさ”や“後悔(のようなもの)”を、

どうにかして押し殺して、

まだ何にも知らない我が子へ語り掛ける声がとっても優しくて、胸に響きました。

 

 

 

そして、物語はクライマックスへと入っていきます。

 

娘も成長し、一人気ままに山登りをすることになった主人公は、

初心者用コースを登っていきます。

 

他の登山者に道を聞いたり、しながらただひたすら山を登っていきます。

 

歩いて歩いて、歩いていくと、

ここから不思議な光景が、主人公と私たちの前に広がっていきます。

 

写真撮影を頼まれたかと思いきや、

酔っぱらいを家に送り届ける人たちとすれ違ったり、

大学時代のサークルの話をする二人がいたり、

好きな人のことが知りたくてミステリー小説を読んでいたり。

 

かつて小説を貸してくれた先輩との再会したり。

 

お互い家庭を持って、昔見たいに短い期間で何冊も本を読むなんて時間もないけど、

でも先輩はあの時教えてくれた秘密を覚えてくれていたり。

 

さらに歩いていけば、

喧嘩ばかりした男の子やクラスメイトが。

 

その子たちが出てくるということは、

あの時、わたしが置いて行ってしまった彼女もきっといるはずだと探します。

 

そうして再会した彼女に、ずっと言えなかったごめんなさいを伝える。

 

 

あの時、学校の外でしか仲良くなかったことが後ろめたくて、

いつも一緒にいるお友達との関係を悪くしたくなくて、

逃げて、避けてしまったこと、

この人生の中でずっと心にしこりとして残っていたことがようやく昇華されます。

 

こういう、子どもの頃の“少し苦い記憶”って、

案外ずーっと残るものなんですよね。

皆さんの心にも、何か思い当たるところがあるのではないでしょうか。

 

 

そうしてゆっくりゆっくり人生を一つずつ、振り返っていきます。

 

腰が曲がった一人の女性の後ろで、

あの時の一歩、またあの時の一歩が思い返されます。

 

 

そうして、あゆみという一人の人生の「最期の一歩」が踏み出される。

 

 

振り返り、長いですね(ここまで読んでくれた人いるのかな)

 

 

この「あゆみ」という作品のすごいところは、

主人公「あゆみ」の人生が、観客である私たちの人生と同じであるというところだと思っています。

 

もちろん、超絶SFファンタジーや時代劇、非日常への没入など、

まるで別世界に居るような感覚になれる作品も魅力的です。

 

「あゆみ」が歩んだ人生は、今見ている観客の人生にとっても近い。

 

この物語で起こることは、日常のなかにあふれています。

ドラマチックなことはそうそう起きない。

 

昔好きだった人と結婚する人が同じ趣味を持っていることを、

“運命”なんじゃないかって思えるくらい、ありふれた人生をおくる。

 

だからこそ、私たち観客は「あゆみ」の人生と「自分」の人生を重ね合わせて、

まるで自分の人生が目の前に広がっているような気になっていく。

 

その「何気ない日常」を、極限までシンプルに作られた舞台上で、

純然たる“演技”で見せてくれたのが、今回の卒業公演でした。

 

 

はじめの方にも書きましたが、

きっと保護者の方は、我が子の成長と「親になったときの自分」とを重ね合わせて、

この「あゆみ」という作品をご覧になったのではないかと思います。

 

 

そうしてカーテンコールでは、2年間ともに歩んできた仲間たちへの感謝や、

周りの人たちへの感謝をしっかりと伝えて幕を閉じ、

るかと思いきや、演出の山口先生からのサプライズ!

彼らの「役者のたまご」としての成長を一番近くで見てこられた先生方の愛情が伝わります。

 

 

終演後、楽屋に押し掛けると泣き顔の皆に出会いました。

「泣きっ面撮りに来たよ!」と言えば、

みんな笑顔を向けてくれました。

 

 

この2年間、きっと苦しいことやつらいことが沢山あったと思うけれど、

こうしていろんな人に支えてもらって自分たちで支えあって踏ん張って頑張ってきた

みなさんの表情を見て、私は何にもしていないけどとても誇らしい気持ちになりました。

 

さて、あまりにも長いのでここらで終わりにしたいと思います。

 

 

卒業された皆さんも、先輩の背中を見てきた2年生の皆さんも、

そしてこれから入学して夢を追いかける皆さんも、一歩一歩踏みしめていきましょうね。

 

そういう私も、皆さんよりはだいぶ年上だけど、まだまだ道半ば!!

 

まだまだ続く人生をしっかり歩んでいきたいと思います。

そう思わせてくれた素敵な作品をありがとうございました。

 

では皆さんも一緒に元気にいきましょう!

せーの、

 

はじめのいーっぽ!

 

 

入学事務局の服部でした。